ドキュメントの管理
最終更新日: 2011年4月18日
適用対象: SharePoint Server 2010
この記事の内容
レビュー: SharePoint Server 2007 のドキュメント管理
ユーザー ロール、目標、および機能
ドキュメント管理の 3 つの目標
ドキュメント管理機能の導入
ドキュメント センターのサイト テンプレートに対する更新
ドキュメント センターの一般的な使用方法
ドキュメント セット
コンテンツ オーガナイザー
場所に基づいたメタデータの既定値
例: ユーザーが大規模ライブラリを整理できるようにする
メタデータ ナビゲーションとフィルター処理
ドキュメント ID
Microsoft Office SharePoint Server 2007 で提供されるドキュメント管理機能に基づいて構築を行う Microsoft SharePoint Server 2010 では、拡張された機能と新しい機能が提供されます。この拡張された機能と新しい機能は、ドキュメントを管理するための組織の能力、および個々のドキュメントとドキュメント グループを利用して対話するユーザーの能力をサポートすることを目的として設計されています。情報アクセスやコンテンツ作成の一般的な考慮事項だけでなく、法令遵守、グループ作業、ドキュメント リポジトリの拡大、ブランド化など、より複雑な要因についてもサポートされます。
このトピックでは、まず、SharePoint Server 2010 のドキュメント管理の重要な側面について要約した後に、以下の新しい機能と改訂された機能について紹介します。
ドキュメント セット
コンテンツ オーガナイザー
場所に基づいたメタデータの既定値
メタデータ ナビゲーションとフィルター処理
ドキュメント ID
レビュー: SharePoint Server 2007 のドキュメント管理
Office SharePoint Server 2007 では、いくつかのドキュメント管理機能が導入されましたが、これらの機能を基盤として、SharePoint Server 2010 では、以下の拡張機能が導入されます。
ごみ箱。ドキュメント ライブラリに格納されたアイテムは、ごみ箱に移動してから削除できます。
チェックインおよびチェックアウト。ドキュメント ライブラリに格納されたアイテムについて、個々のユーザーがチェックアウトとチェックインを行えます。
メジャー バージョンおよびマイナー バージョンの管理。Windows SharePoint Services 3.0 または Office SharePoint Server 2007 ドキュメント ライブラリに格納されたアイテムには、メジャー バージョンまたはマイナー バージョンを設定できます。各バージョンはドキュメント ライブラリに別々に格納されます。
アイテム レベルのアクセス許可。Office SharePoint Server 2007 では、個々のアイテムのレベルでアクセス許可の設定および変更ができます。
コンテンツ タイプ。ドキュメント センターとドキュメント ライブラリ機能では、Windows SharePoint Services 3.0 で導入されたコンテンツ タイプと似たコンテンツ タイプがサポートされます。
ポリシー。ドキュメントに対するポリシーを、個々のコンテンツ タイプ レベルで設定できます。たとえば、"ドキュメント" と呼ばれるコンテンツ タイプがある場合、そのコンテンツ タイプのすべてのアイテムに対するポリシーを設定できます。
ワークフロー。ドキュメント管理機能では、Windows Workflow Foundation で提供されるワークフロー機能がサポートされます。
ドキュメント センターのサイト テンプレート。Office SharePoint Server 2007 には、ドキュメント センター用のサイト テンプレートが含まれます。このサイト テンプレートは、既定の設定を使用して準備されますが、特定のニーズを満たすようにその設定をカスタマイズすることもできます。
また、Office SharePoint Server 2007 のレコード管理機能には、レコード センターが含まれていました。これは、個々のドキュメントのコンテンツ タイプに基づいてドキュメントのルーティング サービスを提供するものでした。コンテンツ オーガナイザーは、このレコード センターの次世代バージョンであり、広範なドキュメント管理シナリオおよびレコード管理シナリオをサポートする、メタデータを利用したルーティング サービスを提供します。
これらのすべての機能は、SharePoint Server 2010 で使用できます。新しいコンテンツ オーガナイザーを除いて、新しいバージョンで大きく変更されたものはありません。
ユーザー ロール、目標、および機能
SharePoint Server 2010 のドキュメント管理機能は、3 つのユーザー ロールを中心として設計されました。このセクションでは、この 3 つのユーザー ロール、および 5 つの新しい機能と 1 つの改訂された機能について説明します。これらの機能は、新しいユーザー ロール、および広範なドキュメント管理シナリオをサポートすることを目的として設計されています。
ドキュメント管理機能では、閲覧者、投稿者、コンテンツ スチュアードの 3 種類のユーザーがドキュメントと対話すると仮定されます。
表 1. ユーザー ロール
ユーザー ロール |
説明 |
---|---|
閲覧者 |
ドキュメント センターにアクセスし、ドキュメントの表示、並べ替え、検索、閲覧を行うことでドキュメントと対話するユーザー。 |
投稿者 |
以下の処理を 1 つ以上実行するユーザー。
|
コンテンツ スチュアード |
ドキュメント リポジトリを所有または保守し、サイト機能の構成、カスタマイズ、および作成を担当するユーザー。たとえば、以下の作業を行う場合があります。
|
ドキュメント管理の 3 つの目標
SharePoint Server 2010 のドキュメント管理機能は連携して以下の 3 つの目標をサポートします。
使いやすさ。閲覧者、投稿者、コンテンツ スチュアードは、ドキュメント管理機能の使いやすさ、高い適応性、管理しやすさ、迅速な展開機能、既定による高度な機能を確認できます。ドキュメント管理機能によって、ドキュメントの作成と管理の向上を推進します。
エンタープライズ対応。ドキュメント管理シナリオに関係なく、ドキュメント管理では、全体的に高度なパフォーマンスが発揮され、充実した機能、カスタマイズ性、拡張性が提供されます。ドキュメント管理機能にはメタデータが注入されており、このメタデータを使用してドキュメント取得機能が促進されます。
広範な参加。組織のすべてのユーザーがドキュメント管理機能にアクセスでき、ドキュメント管理機能のメリットを得ることができます。各ユーザーが必要なものだけを表示できるように、機能を調整できます。
ドキュメント管理機能の導入
SharePoint Server 2010 では、5 つの重要なドキュメント管理機能が導入され、Office SharePoint Server 2007 に付属していたドキュメント センターのサイト テンプレートが大幅に機能強化されています。また、これらの機能では、ドキュメント管理の 3 つの重要な目的がサポートされます。
ドキュメントの作成と管理の向上を推進する
メタデータを使用して、ドキュメント管理タスクを強化し、ドキュメントの取得をサポートする
大規模かつ高速で、高度に管理された、拡張可能なドキュメント ライブラリをサポートする
各ドキュメント管理機能では、これらの目標の 1 つ以上がサポートされます。
表 2. ドキュメント管理機能と目標
機能 |
新機能? |
ドキュメントの作成と管理 |
メタデータの注入とドキュメントの取得 |
規模のサポート |
---|---|---|---|---|
ドキュメント センター |
X |
X |
||
ドキュメント セット |
x |
X |
||
コンテンツ オーガナイザー |
x |
X |
X |
|
場所に基づいたメタデータの既定値 |
x |
X |
||
メタデータを利用したナビゲーション |
x |
X |
X |
|
ドキュメント ID |
x |
X |
ドキュメント センターのサイト テンプレートに対する更新
Office SharePoint Server 2007 に含まれていたドキュメント センターのサイトテンプレートは、SharePoint Server 2010 では、以下のように更新されました。
新しい機能と能力をサポートする。
Office SharePoint Server 2007 に付属するドキュメント センターのサイト テンプレートを置き換える。
レコード センターのサイト テンプレートと同期し、レコード センターのサイト テンプレートに対応して適切に連携する。
新しい多くのドキュメント管理機能に焦点を当てる基本のテンプレートとして機能する。
ドキュメント センターの準備が完了した直後に、投稿者が新しいドキュメントをドキュメント センターに簡単に送信できるようにする。
ドキュメント センターの一般的な使用方法
ドキュメント センターは、さまざまな目的およびサイズのドキュメント リポジトリの開始ポイントとして機能するように設計されています。ドキュメント センターは、数十から数百のドキュメントを含む小規模のグループ作業領域から、より大きなグループ作業リポジトリまでのドキュメント リポジトリ、および数千から数十万のドキュメントを格納する大規模の知識センター サイトをサポートできます。ドキュメント センターは、数百万アイテムのより大きなリポジトリに拡大できます。
グループ作業リポジトリなど、高度なドキュメント管理の用途では、コンテンツ スチュアードは、特定のシナリオとコンテンツ ドメインのニーズを満たすようにサイトを構成できます。コンテンツ スチュアードのシナリオは、ドキュメント リポジトリのほとんどの実装において最も重要なカスタマイズ ポイントです。
ドキュメント セット
SharePoint Server 2010 では、複数のドキュメントで構成される作業生産物を管理するドキュメント セットと呼ばれる新しいオブジェクトが提供されます。これは、特別な種類のフォルダーであり、作業生産物を管理するために使用されます。ドキュメント セットでは、ユーザー インターフェイス (UI)、メタデータ オプション、動作、オブジェクト モデル要素が提供され、作業生産物のすべての側面を容易に管理できます。
SharePoint Server 2010 の機能とサービス全体にわたって使用されるドキュメント セットは、ユーザーがコンテンツを、より有意義で有益な方法で整理できるようにすることを目的として設計されています。ドキュメント セットでは、フォルダー (SPFolder) オブジェクトとアイテム (SPItem) オブジェクトが結合されて、作業生産物が管理されます。たとえば、カスタム Web パーツを開発するには、ビジネス要件を集めて、仕様を記述し、開発計画とテスト計画を作成し、UI 設計のプロトタイプを作成します。カスタム Web パーツは、有形の "マスター" 成果物アイテムですが、すべての要件 (仕様、開発とテストの計画、UI 設計のプロトタイプ) が成果物の重要な部分です。この有形の成果物は、Web パーツ開発プロセスの途中に作成される計画ドキュメントがないと、その最終形式内に存在できません。ドキュメント セット機能を使用して、この計画ドキュメントを、"マスター" 成果物アイテムに関連付けて管理できます。すべての "マスター" 成果物アイテムは、作業生産物の不可欠の部分です。
コンテンツ オーガナイザー
コンテンツ オーガナイザーは、サイトへのドキュメントの送信を管理し、事前定義されたルーティング ルールに基づいて、ドキュメントを適切なライブラリおよびフォルダーにルーティングするための方法です。Office SharePoint Server 2007 で最初に導入されたレコード ルーティング フレームワークに基づくこの機能は、レコード センターとレコード管理のシナリオを超えて、そのレコード ルーティング フレームワークを、より一般的なドキュメント管理のシナリオと用途に向けて拡張します。たとえば、デューイ 10 進分類法を使用して書籍の分類法を決定する図書館員は、内部的な基準を使用して、書籍の物理的な保管場所を決定します。同様に、SharePoint Server 2010 サイトのドキュメント ライブラリなど、その他の "管理コンテンツ ストア" では、コンテンツス チュアード、ライブラリ担当者、または同様のロールのユーザーが、コンテナーと、各コンテナーに属するドキュメントを管理するルールを管理します。コンテンツ スチュアードまたはライブラリ担当者は、コンテンツ オーガナイザーを使用して、コンテナーと、そのコンテナーを管理するルールを管理します。
場所に基づいたメタデータの既定値
SharePoint Server 2010 では、ドキュメントの既定のメタデータを列レベルで構成できます。これは、小中規模のドキュメント ライブラリでは十分な場合がありますが、大規模のドキュメント ライブラリでは範囲が非常に広がります。大規模ドキュメント ライブラリのコンテンツ スチュアードは、フォルダー/場所の構造でドキュメントを整理します。構造内のドキュメントの場所は、アイテムに対する既定のメタデータ値を決定するものです。たとえば、多くのチームを含む組織では、関連付けられたチームがフォルダー名に既に含まれているにもかかわらず、組織のすべてのドキュメントに関連付けられたチーム プロパティが存在する場合があります。場所に基づいたメタデータの既定値を使用すると、ユーザーは、単に列レベルではなく、ドキュメント ライブラリ内のアイテムの場所に基づいて、アイテムの既定のメタデータ値を提供できます。
SharePoint Server 2010 のエンタープライズ コンテンツ管理 (ECM) のすべての機能は、メタデータの重要性と、大規模リストの管理の重要性を重視します。場所に基づいたメタデータの既定値によって、ドキュメント管理シナリオでのメタデータの管理と適用が容易になります。これは、特に、ドキュメント ライブラリ内のドキュメント数が時間の経過と共に増加する場合、強力な使用実践になります。場所に基づいたメタデータの既定値の目標は、以下のとおりです。
コンテンツ スチュアードが、ドキュメントとドキュメント セットの両方について、アイテムの既定の "ヘルパー" メタデータ値をドキュメント ライブラリ内のアイテムの場所に基づいて提供できるようにする。
フォルダー階層内のさまざまな場所で確立された既定のメタデータ値がアイテムにどのように影響するかをコンテンツ スチュアードが理解できるようにする。
投稿者またはコンテンツ スチュアードがアイテムを 1 つの場所に追加 (サーバーまたは Microsoft Office 2010 クライアント アプリケーション経由) するときに、既定値によって該当のフィールドが事前に設定されるようにする。投稿者とコンテンツ スチュアードは、既定値が何に由来するかまたは既定値がどのように設定されたかを認識する必要はありません。
例: ユーザーが大規模ライブラリを整理できるようにする
Fabrikam は、いくつかの "ウィジェット" 製品ラインを製造する大規模組織と仮定します。彼らは、製品のすべての技術仕様ドキュメントのための中央リポジトリとして機能する大規模ドキュメント ライブラリを作成しました。ユーザーと企業がドキュメントを後で簡単に検索できるように、彼らは、仕様が保管されたドキュメント ライブラリ内で、"テスト計画"、"仕様" など、いくつかの異なるコンテンツ タイプを構成します。各コンテンツ タイプには、対象市場、製品リリース日などのメタデータ フィールドが含まれます。ドキュメントの作成者と、ドキュメント ライブラリへの主な投稿者が、製品技術チームです。彼らがドキュメント ライブラリを簡単に使用できるように、フォルダー階層は製品別に整理されています。この階層の整理方法によって、製品チームのメンバーは、"自分の" 製品のフォルダーで作業できます。
特定のドキュメントがどのフォルダーに含まれるかを認識すると、そのドキュメントがどのメタデータを取得する必要があるかについて多くのことがわかります。たとえば、ドキュメントを "Alpha" フォルダーに追加すると、ドキュメントの製品名プロパティは "Alpha Widget" に設定されます。"Alpha Widget" は、企業に焦点を当てるウィジェットの種類のため、"Alpha" フォルダーに追加されたすべてのドキュメントは対象市場フィールドの値が "Enterprise" に設定されます。
注意
Office SharePoint Server 2007 を使用する場合、このような種類の高度なメタデータ処理と継承は不可能です。Office SharePoint Server 2007 では、フィールドの既定値がフィールド定義に設定されます。つまり、複数のリストまたはコンテンツ タイプでフィールドを使用する場合、フィールドの場所やコンテンツ タイプに関係なく、そのフィールドに設定できる既定値は 1 つのみです。フィールド定義の対象となる最も狭い範囲は、リスト レベルです。場所別に既定値を取得するには、複数のフィールドとコンテンツ タイプを作成することで、この制限を回避できますが、この方法は、メタデータを利用したナビゲーションおよびビューのフィルター処理では機能しません。
メタデータ ナビゲーションとフィルター処理
メタデータ ナビゲーションとフィルター処理は、大規模のドキュメント リストを操作するための効果的なツールです。この機能は、SharePoint Server 2010 内の大規模リポジトリのコンテンツを操作するための方法となるように設計されました。これは、以下のように実現されます。
データ上で複数のピボットを可能にする。コンテンツ スチュアードまたはライブラリ担当者がドキュメントにタグを設定してドキュメントを分類した後、ユーザーは、そのメタデータ値に基づいてドキュメントの検索と取得ができます。
閲覧者、投稿者、およびコンテンツ スチュアードが、メタデータ ナビゲーションとフィルター処理を使用してクエリを実行した後に、有益な結果の表示がブロックされないようにする。
ドキュメントの取得に使用するクエリをサポートするインデックスを明示的に作成しなくても、大多数のライブラリで適切に動作するメタデータ ナビゲーションとフィルター処理をコンテンツ スチュアードが構成できるようにする。
追加のインデックスをコンテンツ スチュアードが指定できるようにする。コンテンツ スチュアードはこれを使用して、より広範囲のクエリに対するパフォーマンスを向上できます。
複合インデックスを使用して結果の関連性を高めるように、ユーザーがクエリを改良できるようにする。
ドキュメント ID
ドキュメント ID は、ドキュメントまたはドキュメント セットの一意の識別子であり、ドキュメントの場所に関係なく、ドキュメント ID に関連付けられたドキュメントまたはドキュメント セットを開く静的 URL です。ドキュメント ID が提供する機能は、以下のとおりです。
ドキュメントおよびドキュメント セットなど、SharePoint Server 2010 内のアイテムを参照するための方法。この方法は、URL を使用するよりも強力です。アイテムの場所が変わると、URL は壊れます。この URL の代わりに使用されるドキュメント ID 機能では、ドキュメント ID が割り当てられたコンテンツ アイテムごとに、静的 URL が作成されます。
ドキュメントまたはドキュメント セットを、ドキュメントのライフ サイクル内の異なる時点で移動できる高い柔軟性。たとえば、個人用サイトまたはワークスペース ページでドキュメントを作成し、そのドキュメントをチーム サイトで公開する場合、ドキュメント ID は保持され、ドキュメントと共に移動します。これにより、URL が壊れる問題を回避できます。
一意のドキュメント ID をアイテムに割り当てるドキュメント ID ジェネレーター。サービスが生成する ID の形式をカスタマイズできます。ドキュメント管理 API を使用して、カスタム ドキュメント ID プロバイダーを記述して使用できます。