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チュートリアル: データ バインディングを作成する

見栄えの良い UI をデザインして実装するとしましょう。その場合はまず、プレースホルダー イメージやダミーのボイラープレート テキスト、まだ何も動作しないコントロールを配置します。 次に、実際のデータに接続し、設計プロトタイプからライブ アプリに変換します。

このチュートリアルでは、ボイラープレートをデータ バインディングに置き換え、UI とデータの間で直接リンクを作成する方法を学習します。 また、データを表示用に書式化または変換し、UI とデータの同期を維持する方法についても学習します。このチュートリアルを完了すると、XAML および C# コードのわかりやすさと構造を改善し、保守や拡張が容易なコードを作成できるようになります。

まず、PhotoLab サンプルの簡易バージョンから開始します。 このスターター バージョンには、完全なデータ レイヤーと基本的な XAML ページ レイアウトが含まれています。ただしこのバージョンでは、コードを見やすくするために多くの機能が除外されています。 このチュートリアルで完全なアプリは作成されません。必ず最終バージョンでカスタム アニメーションやアダプティブ レイアウトなどの機能を確認してください。 最終バージョンは、Windows-appsample-photo-lab リポジトリのルート フォルダーにあります。

PhotoLab サンプル アプリには 2 つのページがあります。 メイン ページには、フォト ギャラリー ビューが各画像ファイルに関する情報と共に表示されます。

写真ラボのメイン ページのスクリーンショット。

詳細ページには、選択された 1 枚の写真が表示されます。 ポップアップの編集メニューにより、写真の編集、名前変更、保存を行うことができます。

写真ラボの詳細ページのスクリーンショット。

前提条件

パート 0: GitHub からスタート コードを入手する

このチュートリアルでは、PhotoLab サンプルの簡易バージョンから開始します。

  1. サンプルを入手するため、GitHub ページにアクセスします (https://github.com/Microsoft/Windows-appsample-photo-lab)。

  2. 次に、サンプルを複製またはダウンロードする必要があります。 [Clone or download](クローンまたはダウンロード) ボタンを選択します。 サブメニューが表示されます。 PhotoLab サンプルの GitHub ページの [Clone or download]\(クローンまたはダウンロード\) メニュー

    GitHub に慣れていない場合:

    a。 [Download ZIP](ZIP のダウンロード) を選択し、ファイルをローカルに保存します。 これで、必要なすべてのプロジェクト ファイルを含む .zip ファイルがダウンロードされます。

    b. ファイルを展開します。 エクスプローラーを使用して、ダウンロードした .zip ファイルを参照し、ファイルを右クリックして [すべて展開...] を選択します。

    c. サンプルのローカル コピーを参照し、Windows-appsample-photo-lab-master\xaml-basics-starting-points\data-binding ディレクトリに移動します。

    GitHub に慣れている場合:

    a。 リポジトリのメイン ブランチをローカルに複製します。

    b. Windows-appsample-photo-lab\xaml-basics-starting-points\data-binding ディレクトリを参照します。

  3. Photolab.sln をダブルクリックして、Visual Studio でソリューションを開きます。

パート 1: プレースホルダーを置き換える

こちらでは、データ テンプレートの XAML で 1 回限りのバインディングを作成し、プレースホルダー コンテンツの代わりに実際のイメージとイメージ メタデータを表示します。

1 回限りのバインディングは読み取り専用の不変データです。したがって、これらは高パフォーマンスで簡単に作成でき、大きなデータ セットも GridView コントロールおよび ListView コントロールに表示できます。

プレースホルダーを 1 回限りのバインディングに置き換える

  1. xaml-basics-starting-points\data-binding フォルダーを開き、Visual Studio で PhotoLab.sln ファイルを起動します。

  2. ソリューション プラットフォームが x86 または x64 (Arm は不可) に設定されていることを確認してから、アプリを実行します。 これにより、バインドを追加する前の、UI プレースホルダーがある状態のアプリが表示されます。

    実行中のアプリにプレースホルダー イメージとテキストが表示された状態

  3. MainPage.xaml を開き、ImageGridView_DefaultItemTemplate という名前の DataTemplate を探します。 データ バインディングを使用するには、このテンプレートを更新します。

    前:

    <DataTemplate x:Key="ImageGridView_DefaultItemTemplate">
    

    x:Key値は、データ オブジェクトの表示用にこのテンプレートを選択するために ImageGridView によって使用されます。

  4. テンプレートに x:DataType 値を追加します。

    後:

    <DataTemplate x:Key="ImageGridView_DefaultItemTemplate"
                  x:DataType="local:ImageFileInfo">
    

    x:DataType は、このテンプレートが対応する型を示します。 この場合、このテンプレートが対応する型は ImageFileInfo クラスです (local: は local 名前空間を示します。これは、ファイルの先頭近くの xmlns 宣言で定義されています)。

    次に示すように、データ テンプレートで x:Bind 式を使用する場合には x:DataType が必要です。

  5. DataTemplate で、ItemImage という名前の Image 要素を探し、Source 値を次のように置き換えます。

    前:

    <Image x:Name="ItemImage"
           Source="/Assets/StoreLogo.png"
           Stretch="Uniform" />
    

    後:

    <Image x:Name="ItemImage"
           Source="{x:Bind ImageSource}"
           Stretch="Uniform" />
    

    x:Name は XAML 要素を表し、XAML およびコード ビハインド内の任意の場所から参照できます。

    x:Bind 式は、data-object プロパティから値を取得して UI プロパティに値を提供します。 テンプレート内で示されているプロパティは、x:DataType が設定されている対象のプロパティです。 この場合は、ImageFileInfo.ImageSource プロパティがデータ ソースです。

    Note

    x:Bind 値によってデータ型がエディターに通知されるため、x:Bind 式にプロパティ名を入力する代わりに IntelliSense を使用することもできます。 先ほど貼り付けたコードで試すこともでき、x:Bind の直後にカーソルを置いて Space キーを押すと、バインド可能なプロパティの一覧が表示されます。

  6. 他の UI コントロールの値も、同じ方法で置き換えます。 コピー/貼り付けではなく、IntelliSense を使ってみてください。

    前:

    <TextBlock Text="Placeholder" ... />
    <StackPanel ... >
        <TextBlock Text="PNG file" ... />
        <TextBlock Text="50 x 50" ... />
    </StackPanel>
    <muxc:RatingControl Value="3" ... />
    

    後:

    <TextBlock Text="{x:Bind ImageTitle}" ... />
    <StackPanel ... >
        <TextBlock Text="{x:Bind ImageFileType}" ... />
        <TextBlock Text="{x:Bind ImageDimensions}" ... />
    </StackPanel>
    <muxc:RatingControl Value="{x:Bind ImageRating}" ... />
    

アプリを実行して、ここまでの結果を確認します。 空のプレース ホルダーがなくなっています。 快調なスタートですね。

実行中のアプリで、プレース ホルダーの代わりに実際のイメージとテキストが表示されている

Note

もっと試してみたい場合は、新しい TextBlock をデータ テンプレートに追加し、x:Bind で IntelliSense を使用して、表示するプロパティを見つけてください。

ここでは、ページ XAML に 1 回限りのバインディングを作成してギャラリー ビューをイメージ コレクションに接続し、分離コードでこの操作を行う既存の手続き型コードを置き換えます。 また、イメージをコレクションから削除した場合にギャラリー ビューがどのように変化するかを見るために、 [Delete] ボタンを作成します。 同時に、従来のイベント ハンドラーより柔軟性を高めるためにイベントをイベント ハンドラーにバインドする方法についても学習します。

ここまでに説明したすべてのバインディングはデータ テンプレート内にあり、x:DataType 値で示されたクラスのプロパティを指しています。 では、ページ内の残りの部分の XAML を見てみましょう。

データ テンプレート外の x:Bind 式は常にページ自体にバインドされます。 つまり、配置したものは分離コードで参照することも XAML で宣言することもできます。これには、ページ内の他の UI コントロール (x:Name 値が必要) のプロパティやカスタム プロパティも含まれます。

PhotoLab サンプルでは、メインの GridView コントロールをイメージのコレクションに直接接続するために、(分離コード内で行う代わりに) このようなバインドが使用されています。 後でその他の例も確認します。

メイン GridView コントロールをイメージのコレクションにバインドする

  1. MainPage.xaml.cs で、GetItemsAsync メソッドを見つけ、ItemsSource を設定するコードを削除します。

    前:

    ImageGridView.ItemsSource = Images;
    

    後:

    // Replaced with XAML binding:
    // ImageGridView.ItemsSource = Images;
    
  2. MainPage.xaml で、ImageGridView という名前の GridView を探し、ItemsSource 属性を追加します。 値には、分離コードに実装されている Images プロパティを参照する x:Bind 式を使用します。

    前:

    <GridView x:Name="ImageGridView"
    

    後:

    <GridView x:Name="ImageGridView"
              ItemsSource="{x:Bind Images}"
    

    Images プロパティの型は ObservableCollection<ImageFileInfo> であるため、GridView に表示される個々の項目の型は ImageFileInfo になります。 これは、パート 1 で説明した x:DataType 値に一致します。

ここまでで説明したすべてのバインディングは、1 回限りの読み取り専用バインディングですが、これは単純な x:Bind 式の既定動作です。 データは初期化の際にのみ読み込まれるため、バインディングのパフォーマンスが高くなります。これは、大きなデータ セットの複雑な複数ビューのサポートに最適です。

先ほど追加した ItemsSource というバインディングも、不変プロパティ値に対する 1 回限りの読み取り専用バインディングですが、ここには重要な相違点があります。 Images プロパティの不変値は、コレクションの単一な特定インスタンスであり、ここに示されているように初期化されます。

private ObservableCollection<ImageFileInfo> Images { get; }
    = new ObservableCollection<ImageFileInfo>();

Images プロパティ値は変化しませんが、プロパティの型が ObservableCollection<T> であるため、コレクションの "コンテンツ" は変化することがあります。バインディングによって自動的に変更が通知され、UI は更新されます。

これをテストするために、現在選択されているイメージを削除するボタンを一時的に追加します。 イメージを選択すると詳細ページに移動するため、このボタンは最終バージョンではありません。 ただし、XAML はページ コンストラクター内で (InitializeComponent メソッド呼び出しを介して) 初期化されるため、最終的な PhotoLab サンプルの中では、やはり ObservableCollection<T> の動作が重要になりますが、Images コレクションのデータは後で GetItemsAsync メソッド内で設定されます。

削除ボタンを追加する

  1. MainPage.xaml で、MainCommandBar という名前の CommandBar を見つけ、新しいボタンを拡大ボタンより前に追加します。 (拡大コントロールは、まだ機能しません。これらは、チュートリアルの以降で組み込みます。)

    <AppBarButton Icon="Delete"
                  Label="Delete selected image"
                  Click="{x:Bind DeleteSelectedImage}" />
    

    既に XAML を使い慣れていれば、Click 値が通常とは異なることがわかるはずです。 以前のバージョンの XAML では、特定イベント ハンドラーのシグネチャ (多くの場合、イベント送信元を示すパラメーターやイベント固有の引数オブジェクトなど) を持つメソッドに設定する必要がありました。 この手法はイベント引数が必要な場合にも使用できますが、x:Bind では、他のメソッドにも接続できます。 たとえば、イベント データが必要でなければ、この場合のように、パラメーターを持たないメソッドに接続できます。

  2. MainPage.xaml.cs に、DeleteSelectedImage メソッドを追加します。

    private void DeleteSelectedImage() =>
        Images.Remove(ImageGridView.SelectedItem as ImageFileInfo);
    

    このメソッドは、単純に、Images コレクションから選択されたイメージを削除します。

それではアプリを実行し、ボタンを使用して、イメージをいくつか削除しましょう。 データ バインディングと ObservableCollection<T> 型を使用しているため、UI が自動的に更新されるのを確認できます。

Note

このコードでは、実行中のアプリの Images コレクションから ImageFileInfo インスタンスが削除されるにすぎません。 コンピューターからイメージ ファイルが削除されることはありません。

パート 3: ズーム スライダーをセットアップする

このパートでは、データ テンプレート内のコントロールから、テンプレート外にあるズーム スライダーへの一方向のバインディングを作成します。 データ バインディングを TextBlock.TextImage.Source などの明白なもの以外に多数のコントロール プロパティと組み合わせて使用する方法についても学習します。

イメージ データ テンプレートをズーム スライダーにバインドする

  • ImageGridView_DefaultItemTemplate という名前の DataTemplate を見つけ、テンプレートの先頭にある Grid コントロールの **Height** 値と Width 値を置き換えます。

    変更前

    <DataTemplate x:Key="ImageGridView_DefaultItemTemplate"
                  x:DataType="local:ImageFileInfo">
        <Grid Height="200"
              Width="200"
              Margin="{StaticResource LargeItemMargin}">
    

    変更後

    <DataTemplate x:Key="ImageGridView_DefaultItemTemplate"
                  x:DataType="local:ImageFileInfo">
        <Grid Height="{Binding Value, ElementName=ZoomSlider}"
              Width="{Binding Value, ElementName=ZoomSlider}"
              Margin="{StaticResource LargeItemMargin}">
    

これらは x:Bind 式ではなく Binding 式であることにお気づきですか? これは、データ バインディングの従来の方法であり、現在はほとんど使用されていません。 x:Bind では、Binding で行われるほとんどすべての処理と、それ以上のことが行われます。 ただし、データ テンプレートで x:Bind を使用した場合は、x:DataType 値で宣言されている型にバインドされます。 では、テンプレート内の項目をページ XAML 内または分離コード内の項目にバインドするには、どのようにすればよいでしょうか? この場合は、従来のスタイルの Binding 式を使用する必要があります。

Binding 式では x:DataType 値が認識されませんが、Binding 式には、同様の役割を果たす ElementName 値があります。 これらの値は、Binding Value はページ上にある指定された要素 (つまり、x:Name 値を持つ要素) の Value プロパティに対するバインディングであることをバインディング エンジンに伝えます。 分離コード内のプロパティにバインドする場合は、{Binding MyCodeBehindProperty, ElementName=page} のようになります (page は、XAML の Page 要素で設定されている x:Name 値)。

Note

既定では、Binding 式は一方向です。つまり、バインドされたプロパティ値が変化すると、UI が自動的に更新されます。

これに対し、x:Bind は既定で 1 回限りです。つまり、バインドされたプロパティへの変更は無視されます。 これは最もパフォーマンスの高いオプションであり、ほとんどのバインディング先は静的な読み取り専用データであるため、既定の動作として設定されています。

値が変化するプロパティと共に x:Bind を使用する場合は、必ず Mode=OneWay または Mode=TwoWay を追加してください。 この例は、次のセクションで確認できます。

アプリを実行し、スライダーを使用してイメージ テンプレートのサイズを変更します。 ご覧のように、それほどコードを必要とせず、強力な効果を得ることができます。

実行中のアプリにズーム スライダーが表示されている

Note

チャレンジとして、他の UI プロパティをズーム スライダーの Value プロパティか、ズーム スライダーの後に追加する他のスライダーにバインドしてみてください。 たとえば、TitleTextBlockFontSize プロパティを新しいスライダーに、既定値の 24 でバインドすることができます。 適切な最小値と最大値を必ず設定してください。

パート 4: ズーム エクスペリエンスを改善する

このパートでは、カスタムの ItemSize プロパティを分離コードに追加し、イメージ テンプレートから新しいプロパティへの一方向のバインディングを作成します。 ItemSize 値は、快適なエクスペリエンスのために、ズーム スライダーのほか、 [Fit to screen] スイッチやウィンドウ サイズなどの要因によって更新されます。

組み込みコントロールのプロパティとは異なり、カスタム プロパティでは、一方向または双方向のバインディングが設定されていても UI が自動更新されません。 カスタム プロパティには 1 回限りのバインディングを設定できますが、プロパティを変更して実際の UI に反映させるには、多少の作業が必要になります。

UI を更新できるように ItemSize プロパティを作成する

  1. MainPage.xaml.cs で、INotifyPropertyChanged インターフェイスが実装されるように MainPage クラスのシグネチャを変更します。

    前:

    public sealed partial class MainPage : Page
    

    後:

    public sealed partial class MainPage : Page, INotifyPropertyChanged
    

    これにより、UI を更新するためにバインディングがリッスンできる PropertyChanged イベント (以下で追加) が MainPage にあることがバインディング システムに通知されます。

  2. MainPage クラスに PropertyChanged イベントを追加します。

    public event PropertyChangedEventHandler PropertyChanged;
    

    このイベントは、INotifyPropertyChanged インターフェイスに必要な完全な実装を提供します。 ただし効力を持たせるには、カスタム プロパティでこのイベントを明示的に発生させる必要があります。

  3. ItemSize プロパティを追加し、setter 内で PropertyChanged イベントを発生させます。

    public double ItemSize
    {
        get => _itemSize;
        set
        {
            if (_itemSize != value)
            {
                _itemSize = value;
                PropertyChanged?.Invoke(this, new PropertyChangedEventArgs(nameof(ItemSize)));
            }
        }
    }
    private double _itemSize;
    

    ItemSize プロパティは、プライベートの _itemSize フィールドの値を公開します。 このようなバッキング フィールドを使用すると、不要の可能性がある PropertyChanged イベントを発生させる前に、プロパティの新しい値が元の値と同じかどうかを確認することができます。

    イベント自体は Invoke メソッドによって発生します。 疑問符を指定すると、PropertyChanged イベントが null かどうか、つまり何らかのイベント ハンドラーが追加済みかどうかの確認が行われます。 一方向または双方向のすべてのバインディングでは、イベント ハンドラーが自動的に追加されますが、リッスンされていなければ、それ以上何も起こりません。 ただし PropertyChanged が null でなければ、イベント ソースへの参照 (ページ自体を this キーワードで表す) および event-args オブジェクト (プロパティの名前を示す) を指定して Invoke が呼び出されます。 変更があれば、バインドされている UI を更新できるように、この情報によって ItemSize プロパティに対する一方向または双方向のバインディングに通知されます。

  4. MainPage.xaml で、ImageGridView_DefaultItemTemplate という名前の DataTemplate を見つけ、テンプレートの先頭にある Grid コントロールの Height 値と Width 値を置き換えます。 (このチュートリアルの前の箇所でコントロール間のバインディングを行った場合は、ValueItemSize に、ZoomSliderpage に置き換えるだけです。HeightWidth の両方に必ずこれを実行してください。)

    変更前

    <DataTemplate x:Key="ImageGridView_DefaultItemTemplate"
                  x:DataType="local:ImageFileInfo">
        <Grid Height="{Binding Value, ElementName=ZoomSlider}"
            Width="{Binding Value, ElementName=ZoomSlider}"
            Margin="{StaticResource LargeItemMargin}">
    

    変更後

    <DataTemplate x:Key="ImageGridView_DefaultItemTemplate"
                  x:DataType="local:ImageFileInfo">
        <Grid Height="{Binding ItemSize, ElementName=page}"
              Width="{Binding ItemSize, ElementName=page}"
              Margin="{StaticResource LargeItemMargin}">
    

UI が ItemSize の変化に対応できるようになったため、実際に変更を行ってみましょう。 前に説明したように、ItemSize 値はさまざまな UI コントロールの現在の状態から計算しますが、コントロールの状態が変化するたびにこの計算を実行する必要があります。 これを行うには、UI の変更によっては ItemSize を更新するためのヘルパー メソッドが呼び出されるように、イベント バインディングを使用します。

ItemSize プロパティ値を更新する

  1. MainPage.xaml.cs に、DetermineItemSize メソッドを追加します。

    private void DetermineItemSize()
    {
        if (FitScreenToggle != null
            && FitScreenToggle.IsOn == true
            && ImageGridView != null
            && ZoomSlider != null)
        {
            // The 'margins' value represents the total of the margins around the
            // image in the grid item. 8 from the ItemTemplate root grid + 8 from
            // the ItemContainerStyle * (Right + Left). If those values change,
            // this value needs to be updated to match.
            int margins = (int)this.Resources["LargeItemMarginValue"] * 4;
            double gridWidth = ImageGridView.ActualWidth -
                (int)this.Resources["DefaultWindowSidePaddingValue"];
            double ItemWidth = ZoomSlider.Value + margins;
            // We need at least 1 column.
            int columns = (int)Math.Max(gridWidth / ItemWidth, 1);
    
            // Adjust the available grid width to account for margins around each item.
            double adjustedGridWidth = gridWidth - (columns * margins);
    
            ItemSize = (adjustedGridWidth / columns);
        }
        else
        {
            ItemSize = ZoomSlider.Value;
        }
    }
    
  2. MainPage.xaml でファイルの先頭に移動し、Page 要素に SizeChanged イベント バインディングを追加します。

    前:

    <Page x:Name="page"
    

    後:

    <Page x:Name="page"
          SizeChanged="{x:Bind DetermineItemSize}"
    
  3. ZoomSlider という名前の Slider を見つけて (Page.Resources セクション内)、ValueChanged イベント バインディングを追加します。

    前:

    <Slider x:Name="ZoomSlider"
    

    後:

    <Slider x:Name="ZoomSlider"
            ValueChanged="{x:Bind DetermineItemSize}"
    
  4. FitScreenToggle という名前の ToggleSwitch を見つけ、Toggled イベント バインディングを追加します。

    前:

    <ToggleSwitch x:Name="FitScreenToggle"
    

    後:

    <ToggleSwitch x:Name="FitScreenToggle"
                  Toggled="{x:Bind DetermineItemSize}"
    

アプリを実行し、ズーム スライダーと [Fit to screen] スイッチを使用して、イメージ テンプレートのサイズを変更します。 ご覧のように、最新の変更内容では、コードを適切な構造に維持しつつ、ズーム/サイズ変更のエクスペリエンスがさらに調整されています。

実行中のアプリで画面に合わせるスイッチがオンになっている

Note

チャレンジとして、ZoomSlider の後に TextBlock を追加し、Text プロパティを ItemSize プロパティにバインドしてみてください。 これはデータ テンプレートではないため、前の ItemSize バインディングのように、Binding の代わりに x:Bind を使用できます。

パート 5: ユーザー編集を有効にする

ここでは、イメージ タイトル、評価、さまざまな視覚効果などの値をユーザーが更新できるように、双方向のバインディングを作成します。

これを実現するには、単一イメージ ビューアー、ズーム コントロール、UI 編集を提供する、既存の DetailPage を更新します。

ただし、まず DetailPage (ギャラリー ビューでユーザーによってイメージがクリックされたときにアプリが移動する先) をアタッチする必要があります。

DetailPage をアタッチする

  1. MainPage.xaml で、ImageGridView という名前の GridView を検索します。 項目をクリック可能にするには、IsItemClickEnabledTrue に設定し、ItemClick イベント ハンドラーを追加します。

    ヒント

    コピー/貼り付けの代わりに以下の変更を入力すると、IntelliSense ポップアップに "<New Event Handler>" と表示されます。 Tab キーを押すと、既定のメソッド ハンドラー名を使用して値が指定され、メソッドが自動的にスタブアウトされます (次の手順を参照)。 F12 キーを押すと、分離コード内にある、このメソッドに移動できます。

    前:

    <GridView x:Name="ImageGridView">
    

    後:

    <GridView x:Name="ImageGridView"
              IsItemClickEnabled="True"
              ItemClick="ImageGridView_ItemClick">
    

    Note

    ここでは、x:Bind 式ではなく従来のイベント ハンドラーを使用します。 これは、次に示すようにイベント データを参照する必要があるためです。

  2. MainPage.xaml.cs で、イベント ハンドラーを追加 (前の手順のヒントを使用した場合は、指定) します。

    private void ImageGridView_ItemClick(object sender, ItemClickEventArgs e)
    {
        this.Frame.Navigate(typeof(DetailPage), e.ClickedItem);
    }
    

    このメソッドは、単純に詳細ページに移動するだけです。このとき、クリックされた項目 (DetailPage.OnNavigatedTo でページの初期化に使用された ImageFileInfo オブジェクト) が渡されます。 このチュートリアルで、このメソッドを実装する必要はありませんが、コードで動作の内容を確認してください。

  3. (オプション) ここまでのプレイ ポイントで追加した、現在選択されているイメージと連携するコントロールを削除またはコメントアウトします。 これらを残しても問題はありませんが、詳細ページに移動せずにイメージを選択することがずっと困難になっています。

2 つのページを接続したので、アプリを実行して結果を確認しましょう。 すべて想定どおりに動作しますが、編集ペインのコントロールだけは、値を変更しようとしても応答しません。

ご覧のように、タイトル テキスト ボックスではタイトルが表示され、変更を入力できます。 変更をコミットするには別のコントロールにフォーカスを移動する必要がありますが、画面の左上にあるタイトルは、まだ更新されません。

コントロールはすべて、パート 1 で説明した単純な x:Bind 式を使用して既にバインドされています。 つまり、これらはすべて 1 回限りのバインディングであり、値への変更が登録されていないのはそのためです。 これを修正するために必要な操作は、双方向のバインディングに変換することです。

編集コントロールを対話型に変換する

  1. DetailPage.xaml で、TitleTextBlock という名前の TextBlock と、その後の RatingControl コントロールを見つけ、それぞれの x:Bind 式に Mode=TwoWay を追加します。

    前:

    <TextBlock x:Name="TitleTextBlock"
               Text="{x:Bind item.ImageTitle}"
               ... >
    <muxc:RatingControl Value="{x:Bind item.ImageRating}"
                            ... >
    

    後:

    <TextBlock x:Name="TitleTextBlock"
               Text="{x:Bind item.ImageTitle, Mode=TwoWay}"
               ... >
    <muxc:RatingControl Value="{x:Bind item.ImageRating, Mode=TwoWay}"
                            ... >
    
  2. 評価コントロールの後のすべてのエフェクト スライダーにも、同じ操作を行います。

    <Slider Header="Exposure"    ... Value="{x:Bind item.Exposure, Mode=TwoWay}" ...
    <Slider Header="Temperature" ... Value="{x:Bind item.Temperature, Mode=TwoWay}" ...
    <Slider Header="Tint"        ... Value="{x:Bind item.Tint, Mode=TwoWay}" ...
    <Slider Header="Contrast"    ... Value="{x:Bind item.Contrast, Mode=TwoWay}" ...
    <Slider Header="Saturation"  ... Value="{x:Bind item.Saturation, Mode=TwoWay}" ...
    <Slider Header="Blur"        ... Value="{x:Bind item.Blur, Mode=TwoWay}" ...
    

双方向モードとは、その名前が示すように、いずれかの側で変更が発生するたびにデータが双方向に移動することを意味します。

前に説明した一方向のバインディングのように、これらの双方向バインディングでも、ImageFileInfo クラスの INotifyPropertyChanged 実装により、バインドされたプロパティが変化するたびに UI が更新されるようになります。 ただし、双方向バインディングでは、ユーザーがコントロールを操作するたびに、UI からバインド先プロパティにも値が移動します。 これで、XAML 側への作業は完了しました。

アプリを実行し、編集コントロールを試してください。 変更を行うと、イメージの値に影響するようになっています。また、メイン ページに戻っても、これらの変更はそのままです。

パート 6:関数バインディングを介して値を書式化する

最後に問題が 1 つ残っています。 エフェクト スライダーを動かしても、横にあるラベルが変化しません。

既定のラベル値が表示されたエフェクト スライダー

このチュートリアルの最後のパートでは、表示用にスライダーの値を書式化するバインディングを追加します。

エフェクト スライダーのラベルをバインドし、表示用に値を書式化する

  1. Exposure スライダーの後の TextBlock を見つけ、Text 値を下のバインディング式に置き換えます。

    前:

    <Slider Header="Exposure" ... />
    <TextBlock ... Text="0.00" />
    

    後:

    <Slider Header="Exposure" ... />
    <TextBlock ... Text="{x:Bind item.Exposure.ToString('N', culture), Mode=OneWay}" />
    

    これは、メソッドの戻り値へのバインドであるため、関数バインディングと呼ばれます。 メソッドには、ページの分離コードまたは x:DataType 型 (データ テンプレートの使用時) を介してアクセスできるようにする必要があります。 この場合のメソッドは、.NET でよく使用される ToString メソッドです。ページの item プロパティでアクセスし、さらに item の Exposure プロパティでアクセスしています。 (これは、何重もの接続構造に深く入れ子状態になっているメソッドやプロパティをバインドする方法を示しています。)

    関数バインディングは、他のバインディング ソースをメソッドの引数として渡すことができるため、値を表示用に書式化する場合に最も望ましい方法です。バインディング式は、これらの値の変化を一方向モードでリッスンします。 この例の culture 引数は、分離コードに実装されている不変フィールドへの参照ですが、PropertyChanged イベントを発生させるプロパティにすることも簡単にできます。 その場合は、プロパティ値に変化が発生すると、x:Bind 式が新しい値を使用して ToString を呼び出し、その結果で UI を更新します。

  2. 他のエフェクト スライダーにラベル付けするための TextBlock に対しても、同じ操作を行います。

    <Slider Header="Temperature" ... />
    <TextBlock ... Text="{x:Bind item.Temperature.ToString('N', culture), Mode=OneWay}" />
    
    <Slider Header="Tint" ... />
    <TextBlock ... Text="{x:Bind item.Tint.ToString('N', culture), Mode=OneWay}" />
    
    <Slider Header="Contrast" ... />
    <TextBlock ... Text="{x:Bind item.Contrast.ToString('N', culture), Mode=OneWay}" />
    
    <Slider Header="Saturation" ... />
    <TextBlock ... Text="{x:Bind item.Saturation.ToString('N', culture), Mode=OneWay}" />
    
    <Slider Header="Blur" ... />
    <TextBlock ... Text="{x:Bind item.Blur.ToString('N', culture), Mode=OneWay}" />
    

これで、アプリを実行すると、スライダーのラベルを含めてすべてが正常に動作します。

ラベルが機能するエフェクト スライダー

まとめ

このチュートリアルでは、データ バインディングの基本を紹介し、いくつかの機能を見ていただきました。 終わる前に、1 つ注意しておきたいのは、すべてがバインド可能ではないということです。また、接続しようとする対象の値に、バインドしようとするプロパティとの互換性がない場合もあります。 バインディングには高い柔軟性がありますが、あらゆる状況に対応できるわけではありません。

バインディングで対処できない問題の一例は、詳細ページのズーム機能と同様、コントロールをバインドできる適切なプロパティがない場合です。 このズーム スライダーは、イメージを表示する ScrollViewer と連携する必要がありますが、ScrollViewer を更新できるのは、自身の ChangeView メソッドのみです。 この場合は、従来のイベント ハンドラーを使用して、ScrollViewer とズーム スライダーの同期を維持します。詳細については、DetailPageZoomSlider_ValueChanged メソッドと MainImageScroll_ViewChanged メソッドを参照してください。

とはいえ、コードを簡素化してデータ ロジックから UI のロジックを分離するための強力で柔軟な方法として、バインディングは有用です。 このように分離することで、どちらの側に対しても調整が容易になり、相手側にバグが入り込むリスクを軽減できます。

ImageFileInfo.ImageTitle プロパティは、UI とデータを分離のしている例の 1 つです。 このプロパティ (および ImageRating プロパティ) は、パート 4 で作成した ItemSize と少し異なっており、フィールドではなくファイル メタデータ (ImageProperties 型によって公開) に値が格納されます。 また、ファイルのメタデータにタイトルがない場合は、ImageTitle によって ImageName 値 (ファイル名として設定) が返されます。

public string ImageTitle
{
    get => String.IsNullOrEmpty(ImageProperties.Title) ? ImageName : ImageProperties.Title;
    set
    {
        if (ImageProperties.Title != value)
        {
            ImageProperties.Title = value;
            var ignoreResult = ImageProperties.SavePropertiesAsync();
            OnPropertyChanged();
        }
    }
}

ご覧のように、setter が ImageProperties.Title プロパティを更新してから、新しい値をファイルに書き込むために SavePropertiesAsync を呼び出しています (これは非同期のメソッドですが、プロパティに await キーワードを使うことはできません。プロパティの getter と setter を直ちに完了する必要があるため、使用は不適切です。代わりに、メソッドを呼び出して、返される Task オブジェクトを無視します。)

追加情報

これで、この演習は終わりです。自身で問題に取り組むために必要な、バインディングに関する知識を身につけることができました。

お気付きのように、詳細ページでズーム レベルを変更しても、前に戻って同じイメージをもう一度選択すると、ズーム レベルが自動的にリセットされます。 各イメージのズーム レベルを保存して個別に復元する方法はわかりますか? 幸運をお祈りします!

必要な情報はすべてこのチュートリアルにありますが、さらにガイダンスが必要な場合は、データ バインディングに関するドキュメントをご覧ください。 以下のリンクから参照できます。